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弁護士豊﨑寿昌の気まぐれ業務日誌

日々の業務、雑感、個人的興味を雑多に書いてます。

「『夫は外、妻は家庭守るべき』減少」報道は本当か

www.huffingtonpost.jp

 

転載前の元ネタはこちら。

www.asahi.com

 

という報道なんですが、同時掲載されたグラフを見る限り、「いや、2009年度にガクッと減った『反対』(=夫は外、妻は家庭という考え方への反対)が、ようやくその水準まで回復したに過ぎないんじゃね?」と見えてしまいました。

 

念のために元資料を確認すると、今回の調査結果はまだ内閣府HPには掲載されていないようですが、過去資料は以下のようです。

 

平成26年(2014年)8月 

女性の活躍推進に関する世論調査 -内閣府

 「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方について,どのように考えるか聞いたところ,「賛成」とする者の割合が44.6%(「賛成」12.5%+「どちらかといえば賛成」32.1%),「反対」とする者の割合が49.4%(「どちらかといえば反対」33.3%+「反対」16.1%)となっている。
 前回の調査結果(平成24年10月調査結果をいう)と比較して見ると,「賛成」(51.6%→44.6%)とする者の割合が低下し,「反対」(45.1%→49.4%)とする者の割合が上昇している。

 

平成24年(2012年)10月

男女共同参画社会に関する世論調査 -内閣府

 家庭生活について,夫は外で働き,妻は家庭を守るべきであるか聞いたところ,「賛成」とする者の割合が51.6%(「賛成」12.9%+「どちらかといえば賛成」38.7%),「反対」とする者の割合が45.1%(「どちらかといえば反対」27.9%+「反対」17.2%)となっている。
 前回の調査結果と比較して見ると,「賛成」(41.3%→51.6%)とする者の割合が上昇し,「反対」(55.1%→45.1%)とする者の割合が低下している。

 

平成21年(2009年)10月

男女共同参画社会に関する世論調査

夫は外で働き,妻は家庭を守るべきであるか聞いたところ,「賛成」とする者の割合が41.3%(「賛成」10.6%+「どちらかといえば賛成」30.7%),「反対」とする者の割合が55.1%(「どちらかといえば反対」31.3%+「反対」23.8%)となっている。
 前回の調査結果と比較してみると,「賛成」(44.8%→41.3%)とする者の割合が低下し,「反対」(52.1%→55.1%)とする者の割合が上昇している。

 

つまり、「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」かどうかに関する反対は、2009年がこれまでで最も高く(55.1%)、2012年には10%も急落して(45.1%)、いわば10年ほども前の水準まで後退しています。その後2014年に多少回復し(49.4%)、今回ようやく2009年に近い水準まで回復(54.3%)したのですが、未だ2009年の水準を超えてはいません。この辺、冒頭の記事は何も触れていません。

 

もちろん、私個人は「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」論に与するつもりはありませんが、問題は、上記のような短期的な変動が起こった理由です。

 

2009年から2012年の間に起こったことと言えば、当然ながら民主党政権の成立であり、2012年8月はその末期にあたります。

この問題について、自公政権よりリベラルと思われた民主党政権下で、保守化とも思える世論の動向があったのはなぜなのか。4年前のことで、この世論調査に関する報道がどうであったか、あまりよく覚えておらず、ググってもすぐに出てきません。

 

個人的な推測としては、民主党政権下において、こども手当等、子育てに関する諸施策が試みられたことが、予想と違った方向に世論を誘導したのかなとも思います。民主党の当時の政策は、どちらかというと子育てを女性に押しつけるものではなく、子育ての社会化に向けた意図があったはずなのですが、実際の世論には意図と違う反応を呼んだのではないでしょうか。それとも民主党政権の混迷によって、2012年の秋には世論が急激に保守化していたという解釈もできますが、体感的に男女共同参画分野でそこまでの揺り戻しがあったようには思えません。

 

他方、自公政権に戻ってから、「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」論に対する反対が再び回復しているのは、おそらく現政権による「女性活用」的な政策の方向性を世論が先読みしているからのようにも読めます。

 

ここから判明することは、「夫は外、妻は家庭守るべき」減少というのは、長期的な趨勢としては明らかでも、短期的には時の政権の政策をはじめとする世の中の雰囲気に明らかに影響されているということです。

ここまで見てくると、上記報道は、どうも過去に遡ってきちんと数字を精査したのではなく、内閣府が発表した内容をそのまま垂れ流したような嫌いが否めません。掲載したグラフをちょっとでも見れば、私が抱いたような疑問はすぐに出てくるのですから、同じ報道でももう少し頭を使ってほしいと思います。